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もぎ豆腐店では自社の商品、豆腐や揚げ物に一番よく合う醤油として、蔵造りの町"小江戸川越"、埼玉県川越市に蔵を持つ、松本醤油店の"はつかり醤油"を推奨している。小袋入りのはつかり醤油が付いている商品も数点ある。三之助豆腐にぴったり合う美味しい醤油を添付し"三之助の豆腐本来の美味しさ"を丸ごと味わっていただく為の提案なのだ。160ml入りの三之助、卓上醤油があるがこの中身は"はつかり醤油"である。
松本醤油は今からおよそ170年前、文政13年からの創業だという。醤油蔵の入り口に立つとこっくりした醤油のよい香りが漂う。見学させてもらったのは秋口の始めだったと記憶している。少々汗ばむくらいの暖かい日差しに、庭に植えてあるコスモスがそよぎ、蜂がゆっくりと飛んでいた。木造の醤油蔵の向こうには大きなけやきの木が蔵を覆うように伸びている。高さにして三階、四階程はあろうか、おそらく樹齢何百年とかのこの大きな木とともにこの蔵は栄えてきたのだろう。
暗い蔵の中に入ると「もろみ」のかおりがぷーんと香る。木造の蔵に床は土間。人の2.5倍はあろうかという大きな木桶が幾つも並んでいる。天井の梁や柱には墨文字で年号が入り、天窓の光取りから射す明かりに蜘蛛の巣が絡まっているのが判る。これが話に聞く、ここの蔵だけに住み着く酵母菌の住処だ。この柱や梁にこの蔵だけの酵母菌がいて「ここだけの味」を造っているのだろう。
見るからに真面目な職人といった風情のご主人が自ら案内に立ち丁寧に説明をする。
醤油は蒸した大豆と煎った小麦に麹を加え、更に塩も加えて発酵させる。この発酵状態の温度管理が味と出来栄えに繋がり、職人達が誠心誠意気持ちをこめて、自らの技と感を持って挑む場面 である。この工程で"もろみ"になるのだ。入る前に圧倒されたあのけや木の大木は隣の神社のご神木で、蔵に影を作って蔵の温度を調整しているという。この自然の温度調整も"はつかり醤油"の味を作っている要素の一つなのだろう。
ご主人は「醤油造りは菌が仕事をしてくれます。私たちはそれに手を少々貸しているだけです。」と話している。説明を聞きながら江戸時代の男達がここで"もろみ"作りに働いている情景を想像できてしまったのは、この蔵の光景と香って止まないもろみの香りと律儀に説明するご主人のお人柄からだろうか?
出来た"もろみ"をここから更に約2年間も熟成させ、"もろみ"の粕を絞ると生醤油が出来上がる。これを熱殺菌してやっと商品になるのである。
はつかり醤油は江戸風の濃い口醤油である。香りが高く、ストレートな味がする。朴訥な味わいだ。朴訥だがキレがある。朴訥だがはっきりしている。優しい甘味がある。関西の薄口醤油等の塩味の中の旨味とは違う。濃い口醤油で色も濃いが塩分が強い訳ではない。江戸っ子が好む"濃い口醤油"はこのキレの良さと豆のほんのりした気どらない甘味がポイントなのかも知れない。
ああ、これで"はつかり醤油"が三之助豆腐と相性がよい訳が説明できそうだ。"はつかり醤油"は三之助豆腐が織成す豆の優しい味わいと同種の味わいなのだ。醤油原材料の大豆が持っているほんのりとした旨味・甘味と三之助豆腐の大豆の旨味・甘味を何かの計測器で計ったら、きっと同じ値がでるような共通 のものなのだと思う。大豆本来の甘味・旨味単位とレベルが同じなのである。だから相性が絶妙なのだ。お互いの良さを引き立てあう関係なのだ。
最近は何かにつけて"うまみ""うまみ"と言って旨味成分が添加された食品や調味料が多い。はつかり醤油は本醸造。丁寧に時間をかけて作ったほんものの醤油である。添加した旨味ではない。
"本物つくり"をしていると他にも"本物"があることを知り、"本物つくり"をしている人達と出会う。そうして本物の輪が拡がっていくのだ。
本物の味、即ち食べ物本来の味、旨味、甘味というものを未来に繋ぐ子供達や若い人達にもっともっと味わってほしい。そして、人と人が出会ったり、お互いの良さを引き立てあう関係に発展していったらこんなに楽しいことはない。

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