秋茗荷の香り

IMAGE庭の片隅に花ミョウガを見つけた。そろそろミョウガの子が出ている時期かな?・・・と膝まで伸びたミョウガの葉を分け入って、顔を地面に近づけると、うす黄色のちょっと繊細な花を頭につけた“花ミョウガ”が地面からぽこぽこ出ている。

6〜7月頃に収穫するのは、「夏ミョウガ」、8〜10月頃に収穫するのは、「秋ミョウガ」と呼び、年に2回収穫する。夏ミョウガは小ぶりで締まっているのに対し、秋ミョウガはぷっくりと丸みを帯びて太っているので甘酢漬やしば漬けなどの保存食にも向く。

本来は花が咲く前に収穫するのが正しいと言われている。花が開いたミョウガは、やわらかく風味も落ちるという。しかしミョウガの子が出ていることに気付く時には、たいていミョウガの子の半分以上は既に花をつけているのである。それでも花を取り除いては、豆腐の味噌汁などに入れて食べるのだが、そんな花つきのミョウガの風味も、食感もなかなかのものなのである。しかも凄いオマケもついてくる。「痒い」オマケ。藪の中の地べたを這い蹲るのだから、やぶ蚊にとってはこんなラッキーなことはない。普段は滅多に無い「顔」や「首」や「指先」などをやたらに刺されるのだ。そういえば、毎年ミョウガを採る時はこの「痒み」も一緒に思い出されるような気がする。ミョウガの成育は、湿気の多いところが適所。やぶ蚊のいるようなところにミョウガは花を咲かせるのだ。この「痒み」は美味しいものをいただく代償なのかも?

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ミョウガに含まれる精油成分「アルファ・ピンネ」というあの独特の芳香と風味は、大脳皮質を刺激してボーっとした頭をしゃきっとさせてくれる。熱冷まし、解毒効果がある。ホルモンバランスを整える効果がある。生理不順や更年期障害によい。発汗、呼吸、血液循環などの機能を促す作用があるので腰痛、肩こり、リウマチ、神経痛にも効果的だという。夏バテによく、独特の芳香は食欲増進に繋がる。つまり“花ミョウガ”の旬は、ちょうどその季節の人の体調を整える・・・という仕組みに当たり前のようになっているのである。

ミョウガはほのかな苦味、しゃきっとした食感、独特の爽やかな風味が珍重される。もしかしたらこの香りが解かるのは日本人だけかもしれない。去年の薬味考「茗荷」でも書いたが、ミョウガの香り、この複雑な香りが解かるのは「酒の味」や「豆腐の味」が解かる年代、つまり食べ物を口にする段階で、その大もとの素材の味が読めること、そんなことができるようになる“大人の舌”を持ってからなのだろうと思う。

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ミョウガを野菜として栽培しているのは世界で日本だけである。数少ない日本原産の香味野菜の一つである。少々硬い話になるが、その食材を守り、時代に繋ぐのは、その食材を実際に楽しんで食べ繋がなければ、当然次へは繋がらない。この少々複雑で爽やかな香りを子供や孫たちの時代にもしっかり受け継がれていくように、使命感をもってしっかり旬を楽しみたいものである。

食べ物を楽しむことに「使命感」などと言う堅苦しい言葉を使い、返って伝わりにくくさせたくはないが、現代の食事情に関して危機感を拭えず、今、改めて「食」を見直す時が迫っているように思え、直接的な言い方になってしまう。

“旬を楽しむ”こととは、グルメ的な捉え方だけではなく、そこには「食」本来の摂理や生きる意味が含まれていることなのだと思う。季節が巡るごとに収穫されるそれぞれの素材、味、その香りを喜び、楽しむことの根底には、生きていることへの感謝が込められている。