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以前、この「豆腐薬味考」で、出雲の“めのは”(板わかめ)の話をした記憶があるが、その出雲に行った際にすっかりはまってしまったもう一つの食材がある。「岩海苔」である。
出雲でお昼ご飯をとった時のこと、最後にほんのり温かいご飯のおにぎりが出された。炊き立ての白ご飯のおにぎりの表面につけ醤油が塗ってあり、その上にこの岩海苔が塗してあったのだ。通常、板海苔を巻く、その海苔の替わりに、さっと香ばしく煎った岩海苔が塗されて、とても美味しく食べたのを思い出す。
以来、この島根の岩海苔を買い求め続け、おにぎりはもちろん、いろいろな食べ方を楽しんでいる。
この岩海苔も昔は、“板わかめ”同様、貴重品として位置付けられ、年貢とともに献上物の一つだったようである。
島根の岩海苔は、繊維がしっかりしていてコシがあり、香りが高い。出雲地方では正月のお雑煮に欠かせないのがこの岩海苔、昆布と鰹の出汁に醤油と塩で味を調え、丸餅を入れて、この岩海苔を入れる。この食べ方を知ってから、汁物にこの岩海苔を入れる美味しさを知り、それ以来我が家の定番料理になっている「ケイハン風お茶着け」と「豆腐と岩海苔の吸いもの」のレシピができ、いろいろなところで紹介している。
そのひとつ、「豆腐と岩海苔の吸い物」をメモするので、是非試してほしい。昆布だしに塩、醤油、みりん、酒少々で味付けをし、豆腐を大ぶりに切って温める。椀に豆腐と汁を盛り、岩海苔ひとつまみと煎った金ごまを捻りながらパラパラとかけ、風味を添える。豆腐と岩海苔と金ごまと出し汁だけの組み合わせだが、どれが欠けてもこの味は出てこない。三つ葉を添えてもよいが、必要無いくらいしっかりした吸い物になっている。
素材の確かなものをシンプルに食す。これが何より、食べ物を美味しく食べる条件である。そして決して特別の技術や器具、設備は必要ないが、食材ひとつひとつを丁寧に扱うこと。そして楽しく美味しく、まるごと全て食すこと。こうすることで極自然に素材、作り手、それを運んでくれた人への感謝の心が湧いてくるから不思議だ。
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