三之助豆腐で作る豆腐百珍
【2005年】
【6月】 揚げ田楽
【5月】 備後豆腐
【4月】 うずみ豆腐
【3月】 沙金豆腐
【2月】 寄せ豆腐
【1月】 高津湯豆腐

【12月】 今出川豆腐
【11月】 味噌漬豆腐
【10月】 引きずり豆腐
【9月】 雲かけ豆腐
【8月】 六方焦着豆腐
【7月】 玲瓏豆腐


【十二月】 今出川豆腐

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今月は、三之助の只管豆腐(ひたすらどうふ)を使って「豆腐百珍 三十九、今出川豆腐」(いまでがわどうふ)を作りました。

「今出川豆腐」とは、酒を加えた出し汁で豆腐を煮たものに醤油で味付けをし、葛でとじて仕上げたものに、薬味に炒り胡桃をのせていただく料理です。

出汁と酒、醤油のいたってシンプルな味付けに香ばしい胡桃の香りが引き立ちます。豆腐自体の美味さ、出汁の味わい、胡桃の香ばしさそれぞれが互いを殺すことなく引き立ちあい、シンプル且つ奥深い味わいがあります。“江戸の味わい”というより寧ろ、“新しい味わい”と言ってもよいくらいの創造的な味わいがします。

これは豆腐百珍の「通品」に入っているもので、“料理に格別難しいものはなく料理法は記すことなく料理名のみ記す。”とされていますが、なるほど作り方は簡単ですが、味わいは「通品」を超えるものに思えてなりません。

出来上がりの色、形も美的に優れていて百珍の中でもこころに残る一品となりました。


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【十一月】 味噌漬豆腐

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今月は、三之助豆腐(みのすけどうふ)を使って「豆腐百珍 七十三、味噌漬豆腐」(みそづけどうふ)を作りました。

「味噌漬豆腐」とは、豆腐の水切りを充分に行い、和紙に包んだ豆腐を一昼夜味噌に漬けていただく料理です。

豆腐の原料である大豆のまろやかさが、味噌のこっくりした味わいと混然一体となって何ともいえない深い味に変わります。和風のチーズのような深みのある味わいです。

このまま小さく切って器に盛れば、絶品の酒の肴になるでしょう。また、現代風にアレンジして、ガーリックトーストやバケットパンにぬっても洒落たオードブルになりそうです。チーズのように扱えば幾らでも料理の幅が広りそうですね。

これは豆腐百珍の「奇品」に入っているもので、“ひときわ変わったもの”という位置付けですが、二百数十年経った現代でもかえって新鮮に感じられ、現代の料理にも応用が広げられるのですから発想の豊かさには頭が下がります。おまけに豆腐の種類や味噌のバリエーションでチーズの種類が豊富なように、無限大に様々な味が楽しめるところも数少ない優れた料理の一つであると言えるでしょう。


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【十月】 引きずり豆腐

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今月は、三之助の只管豆腐(ひたすらとうふ)を使って「豆腐百珍 五十一、引きずり豆腐(ひきずりどうふ)を作りました。

「引きずり」とは絹豆腐、又は木綿豆腐を一人分の大きさに切り、それを葛湯で煮て、山葵味噌を添えていただく料理です。

山葵味噌は、器の蓋(ふた)の裏に着けて供します。蓋を開けた時に、その蓋の内側に山葵味噌が着いていることに意表をつかれ、江戸グルメ達の料理を楽しむ粋な遊び心が、二百数十年経った現代にまで伝わるのですから不思議です。

葛湯で豆腐を温める心遣いは、素材の旨味を逃がさない工夫が感じられ、豆腐を美味しいものとして大切に扱う気持ちが伝わります。葛湯の中の温まった豆腐は見た目にも美しく、山葵味噌の味わい深さがこの料理の奥行きをひろげます。

素材の扱い、料理の美しさ、味の奥行き、意表をつく遊び心、そして誰もが作れるシンプル感、これら全てが揃った完成度の高い、奥深い豆腐料理だと思いました。


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【九月】 雲かけ豆腐

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今月は、三之助豆腐を使って「豆腐百珍 四十四、雲かけ豆腐(くもかけどうふ)を作りました。

「雲かけ」とは水切りした豆腐の表面に白玉粉をまぶして蒸しあげたもので、豆腐にうっすらと半透明の膜が張った様子を「雲かけ」と表現したのだと思います。きれいに蒸しあがったその豆腐の上に山葵風味の味噌を添えていただく豆腐料理です。

豆腐の表面を白玉粉で覆って蒸しあげると、(1)豆腐にスが立たない (2)舌ざわりがよく、おいしい (3)水分が出ずに見た目がきれいなどの利点があります。さらに、夏の献立としては、火を通すことで殺菌になりますし、冬の献立としては温まる料理になります。

今更ですが、三百年程昔の調理法が、今日の日常の料理としても、簡単に取り入れることができ、しかも美味しく、見た目にも美しい料理であること・・・ 豆腐百珍の料理法や当時の先人たちの知恵に改めて感心するばかりです。

山葵味の味噌も、そこへ隠し味的に胡桃のコクを加えることも、改めて新鮮に感じられる料理法で、他の料理への応用としても使ってみたい爽やかなかけ味噌でした。江戸の風味と食感を充分にお楽しみいただける豆腐料理だと思います。


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【八月】 六方焦着豆腐

今月は、三之助豆腐を使って「豆腐百珍 六十二、六方焦着豆腐(ろっぽうやきめとうふ)を作りました。

「六方」とは奴(やっこ)に切ったほぼ立方体の表面、六面という意からきています。そこにこんがりと焼き色をつけて焼く豆腐です。大根おろしや小口切りの葱などを薬味を添え、醤油でいただきます。

いわゆる現代の豆腐ステーキとは違い、六方に切る豆腐の形が、江戸らしく粋さで、江戸の趣きを感じさせる豆腐料理です。

豆腐にしっかりと焼き目(焦げ目)をつけるのがポイント。火は弱火にし、フライパンで表面がパリッとしてくるまでじっくりと焼きを入れます。

もちろん一年を通してのお料理でしょうが、日本の蒸し暑い夏の豆腐料理としておすすめです。暑い夏場には、しっかり冷やした冷奴、また反対に、少量の油を使って、豆腐にしっかりと火を入れる“焦着豆腐”のような料理も、ある意味理にかなった料理といえるでしょう。

お味は厚揚げなどの揚げものとは、また一味違ったテイストになり、あわせる薬味で幾通りにも楽しめる、完成度の高いレシピだと思いました。大根おろし、生姜の摩りおろし、小口葱、もみじおろし、青しそ、山椒、などお好みの薬味を添えて江戸の美味をご堪能下さい。


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【七月】 玲瓏豆腐

今月は、三之助の絹豆腐、「和ら絹」を使って「豆腐百珍 五十八、玲瓏豆腐」を作りました。

百珍で「玲瓏豆腐」とは「こおりとうふ」と読みますが、「玲瓏」(れいろう)とは、“玉のようにひかり輝くさま”とあります。寒天の断面が光に反射し、さらに豆腐の白が輝きます。まさしく夏に相応しい、涼しげな一品と言えます。寒天の透明さが、氷のようにも見え、玲瓏(れいろう)と氷をかけて、「玲瓏豆腐」(こおりとうふ)と読ませたのではないでしょうか?

「玲瓏豆腐」を口に入れると、寒天の滑らかな 食感の中から「和ら絹」のこっくりした豆の味わいとクリ−ミーな部分が弾け出し、思わず微笑みたくなるような食感が口中に広がります。

黒蜜をかけてもよし、甘夏果汁を使った柑橘醤油でさっぱりといただくのもよし、夏のデザートにしたい一品です。

流し箱は和ら絹が入っていた容器を使うことで、豆腐と同じ大きさの寒天が簡単に出来上がります。夏休みのお子様のお八つに、江戸の昔の豆腐料理をお子様たちと一緒に作られてみるのはいかがでしょう。


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【六月】 揚げ田楽

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今月は、三之助の「三之助揚げ」を使って「豆腐百珍 三十一、揚げ田楽」を作りました。

「豆腐百珍」には、“豆腐は田楽に用に下拵えをし、油で素揚げしてから串を打って火にかけ・・・”とありますが、今回は「三之助揚げ」(三之助豆腐で作った揚げ豆腐)を使いました。

「三之助揚げ」一つを三等分に切ると、ひと口サイズの可愛らしい大きさになります。これをオーブントースターで空焼きをして、水分を飛ばしたものに田楽味噌を塗って味噌にこんがり焼き目をつけます。

揚げ豆腐の皮のパリッとした食感と中のふんわりしたお豆腐、こんがり焼けた味噌の風味が香ばしい、絶品串田楽が出来上がりました。三之助の「只管味噌」とみりんを合わせただけの田楽味噌の味は、日本の調味料の奥深さを改めて気付かせてくれます。

毎度の事ながら、シンプルな材料にシンプルな調理法。これだけでこの風情が出せる百珍料理に頭が下がります。

焼き上げる料理なので汁気が出ずに、お弁当の菜や酒の肴、子供のお八つなどに取り入れたいお料理です。


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【五月】 備後豆腐

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今月は、三之助の「三之助豆腐」を使って「豆腐百珍 四十九、備後豆腐」を作りました。
「備後」とは、現在の広島県福山市周辺の地域を指します。

「備後豆腐」の作り方には、田楽の下処理をして両面焼いた豆腐を酒で煮た後醤油で味付をけして煮しめ、大根おろしと花かつおを添えて供す・・・とあります。

豆腐を煮る前に焼くのは形を崩さない為でしょう。調理の工程も味付けもいたってシンプルなだけに、返って素材の良し悪しや、手際さえも出来あがりの味に影響がでてしまうものだつくづく思いました。ひとつのレシピで三百年前の江戸時代の料理をいつでも実際に再現できるのです。百珍の料理は、自然に気持ちが静まり、所作や材料の扱いなど、ひとつひとつ丁寧に進めたくなるから不思議です。

素朴ですが、しっかりした味わいの豆腐料理です。季節の野菜等とともに酒の肴、ご飯の菜にと、現代の日常食に取り入れたいひと品です。 


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【四月】 うずみ豆腐

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今月は、三之助のかちかちを使って「豆腐百珍 五十二、うずみ豆腐」を作りました。

「うずみ」とは灰の中に埋めた炭火を指します。田楽に仕上げた豆腐の赤茶色を炭火として上にのせた白飯を灰になぞらえて「うずみ豆腐」としたのでしょう。

「うずみ豆腐」の作り方には、田楽に仕上げた豆腐の上に、湯で温めた冷飯を天盛りにし、木の芽を添える。・・・と書かれています。

豆腐に塗られた味噌のこっくりとした褐色とその上に盛られた純白の白飯、そして天に添えられた緑鮮やかな木の芽の色と若々しい香りが清々しい春を感じさせ、出来上がった料理を前にして、なおさら食欲をそそられる一品です。

こっくりした味噌味の旨味と白飯の組み合わせは、シンプル且つ、ふくよかな味わいとして日本人の誰もが好む味でしょう。

豆腐百珍の作り方に、"湯で温めたごはん"というくだりがあり、具体的にどのようにしたらよいか判らずに、専門家の先生にお聞きしたところ、「冷やご飯を湯煮するの意。」とのことでしたが、炊き立てご飯があればそちらの方がよいでしょう・・・とアドバイスをいただき、今回は、炊いたご飯を使いました。

料理名といい、盛り付けの見せ方といい、江戸時代の料理人の美意識の高さ、粋さを感じさせる豆腐料理です。


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【三月】 沙金豆腐

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今月は、三之助の油揚げを使って「豆腐百珍 五十五、沙金豆腐」を作りました。

「沙金」とは砂金。砂の中にある砂状の"金"を指します。

油揚げを開いて袋状にした中に鯛、鴨肉、銀杏、牛蒡、人参、木耳、椎茸、卵などの豪華な具がたっぷりと入ります。"宝物が沢山詰まった沙金袋"という豆腐百珍の中でも大変豪華なとうふ料理です。

一つの袋に野菜だけでなく鯛と鴨肉まで入れるという豪華絢爛な具材の使い方は庶民の料理というより貴族やお殿様の料理を想像させます。これを薄口の甘辛だしで味付けし、極軽い粉末の山椒の風味を添えていただきます。

鯛の優しい甘味と具をとじた卵が他の具材を優しく包み、薄味のほんのり甘い出し汁に風味付けの山椒が出過ぎず、何とも上品な煮物になりました。

山椒の使い方の絶妙さには感動です。三百年前の料理に和食使いの山椒の原点を見るような感覚と、同時にまた新しいものを見つけた様な感覚を覚えた"おとうふ料理"でした。


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【二月】 寄せ豆腐

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今月は、三之助のおぼろ豆腐「ふわふわ」を使って「豆腐百珍 二十五、寄せ豆腐」を作りました。

豆腐百珍「寄せ豆腐」は、おぼろ豆腐を「美濃紙」で茶巾のように包み、葛仕立てのおすましの椀に盛り、供す・・・という料理です。

「美濃紙」とは、岐阜県美濃地方で千三百年もの歴史を持つ紙漉きの技からつくられた伝統和紙のこと。楮(こうぞ)という植物の繊維百パーセントで長い工程を全て手作りで作られる故に今や生産量 が極少量、という貴重品です。強い繊維が絡み合い通気性に優れているが、敗れにくく頑丈という、この和紙を使って、おぼろ豆腐を包み・・湯で温める。・・すると、美濃紙の間から豆腐の余分な水分が離水していき、豆本来の甘味をぐーんと引き出していくのです。このシンプルな豆腐本来の甘味にすまし仕立ての薄味の出汁。なんとも工夫され、計算された料理なのだと感心しました。しかも茶巾の姿がなんとも楽しく、美濃紙を早く開きたくなるような食べ側の気持ちまでちゃんと見越して提供するのです。

和紙で茶巾仕立てにするこの「寄せ豆腐」に先人たちの智恵の豊かさと江戸グルメたちの粋な遊び心の一端を見る思いがしました。


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【一月】 高津湯豆腐

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明けましておめでとうございます。
今年から新たな企画として、「三之助豆腐で作る豆腐百珍」と題しまして毎月一品ずつ、今からおよそ二百年前、江戸は天明の頃の豆腐料理を再現しご紹介していきたいと思います。

尚、この企画に際しまして、新潮社の「豆腐百珍」福田浩 杉本伸子 松藤庄平著を参考図書として使用させていただいております。

時は天明、場所は大江戸日本橋に三之助が営むもぎ豆腐店がタイムスリップ。そんな仮定で当時のレシピを再現してみたいと思います。その中で当時の食における知恵や工夫、豆腐料理に見る先人たちの味覚や味わい方を少しでも知ることができたら・・と思います。

さて、初回の一月は、三之助の「和ら絹」を使って「豆腐百珍 六、高津湯豆腐」を作りました。

何ともシンプルな料理ですが、シンプルなだけに素材の取り扱いと素材自体の味が問われる奥深い料理だと思います。三之助の絹豆腐「和ら絹」を美しく漆器椀に盛るには、息を止めるくらいの集中が必要です。若狭の熊川から取り寄せた本葛は静かな気持ちで溶き、優しく徐々に火を入れていきます。

料理を供することの想いを学びました。作っている自分の心理状態までもが静粛な気持になり、豆腐やだし、本醸造の醤油、本葛など、素材ひとつひとつに感謝の念が生まれてくるような、そんな奥の深い味わいが詰まった椀になりました。


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